ご挨拶

第27回日本脳神経減圧術学会

会長 樋口 佳則

千葉大学大学院医学研究院脳神経外科 教授

樋口 佳則

この度、2025年2月に東京で開催される第27回日本脳神経減圧術学会の会長を努めさせて頂くことになりました。よろしくお願いいたします。本学会は、1998年に近藤明悳先生が、手術の理解を深め、知見を共有することを目的として研究会として発足させ、その後学会に移行し現在に至ります。本学会では、手術やモニタリングなどさまざまなcutting edgeを習得することができ、勉強させていただくことばかりでありました。今度は、本学会を主催させていただくこととなり、身の引き締まる思いです。

今回の学会のタイトルは「セレンディピティーからニュースタンダードへ」とさせていただきました。Janetta先生が三叉神経痛に対するtranstentorial retrogasserian rhyzotomyの報告が1966年にされ、この際に三叉神経が動脈により圧迫され変形していることを見いだし、microvascular decompression、いわゆる「脳神経減圧術」という、新しい三叉神経痛の外科的治療のきっかけとなりました。1975年、Jannetta先生自身が論文上で、「By serendipitous microsurgical observation in 1966 the author noted that the trigeminal nerve root entry zone was cross-compressed and distorted by a small artery in a patient with tic douloureux」と記載しています。このSerendipityが、現在の脳神経減圧術のスタートとなります。

現在、術前画像診断、シミュレーション、モニタリングなどさまざまな脳神経外科医の努力により、手術合併症率は低下していますが、機能的手術である以上、合併症率0%を目指す努力は今後も必要と考えます。また、外視鏡・内視鏡など、手術支援機器も多様となり、新たなスタンダードを考える時代へと入りつつあります。本学会では、現在のスタンダードと今後我々が進むべき道を考える機会となることを期待しています。

以前は「動脈瘤のクリッピングができれば一人前」という脳神経外科医のひとつの目標がありました。私も、卒後10数年頃までは、破裂動脈瘤、未破裂動脈瘤のクリッピングを行っており、マイクロ操作をし始めの頃は、くも膜の剥離操作、リトラクターの使い方など、上司の指導を受け行っておりました。血管内治療の技術的かつ医療機器的発展はめざましく、破裂動脈瘤、ましてや未破裂動脈瘤など若い世代の脳神経外科医が手術の機会を得ることは限られており、「血管障害の手術→MVD」というステップを描くことは難しくなっていく可能性があります。医師を教育する立場として、どのように新世代を教育するかは重要な課題と考えています。最先端の手術手技、モニタリング、顕微鏡・外視鏡・内視鏡手術手技、さらに若手術者への教育に関し議論が深められればと考えております。

2025年2月、東京浅草で皆様のご参加をお待ちしているとともに、熱いディスカッションが学会会場でできることを楽しみにしております。

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